学生の頃から、僕は書店に行くのが趣味みたいなものです。書店は、ついつい時間を忘れて長居してしまう、そんな場所です。何か欲しい本がある訳ではなくても、フラリと立ち寄ると新たな出会いがある。だからこそ楽しくて、定期的に行くようにしています。
ところで、全ての書店がそうとは言い切れないと思いますが、ある程度の規模の書店であれば、世相を反映した品揃えになっていますよね。商売上当然のことと言えばその通りなのですが、売れる本(売れている本)や注目の新刊本が前面に並びますし、よく売れる分野については新たにコーナーができたりします。僕はいわゆる世間で売れている本にはあまり関心がなく、昔は岩波文庫コーナー、今は学習参考書コーナーにばかり立ち寄るのですが、先日地元のある書店を訪れた時に、「おっ!」と思う“発見”がありました。
一般書に比べ、学習参考書のターゲットは限られますから、今回の“発見”は普段から学習参考書コーナーを見ている人でないとなかなか気付きづらいことであると言えるかもしれません。それは、今まで中学生向けの教材(少し前までは教科書ガイドが並んでいたように記憶しています)が並んでいたコーナーが、まるまる私立中学校の入試対策コーナーに変わっていたということ。しかも、並んでいるのは隣県愛知県の中学校の過去問でした。私立中学校入試に関するコーナーはこれとは別に元々あり(スペースとしては広いと言えなかったですが)、今回はコーナーが拡大されたということになるでしょうか。
先程も書きましたように、書店は世相を反映した品揃えをする訳ですから、売れる見込みが薄い本をわざわざコーナーまで作って売り出そうとはしないでしょう。このことから、今回私立中学校の入試対策コーナーが拡大されたのは、過去問等に関する問い合わせが多かったことの裏返しであると言えると思います。それを裏付けるような話を耳にすることも多くなってきました。
加えて、この“発見”の舞台が「岐阜県の」書店であること、これが今回僕にとっては大きな衝撃でもありました。時代は変わっているなぁと実感したと言いますか。選択肢としての私立中学校受験が、以前よりも遥かに身近なものになりつつあるんだなぁという意味で。岐阜大附属中学校が小中一貫課程へと変わり、中学課程からの募集がなくなったことも理由としては考えられますが(現在は欠員補充のみ)、それだけではないと思うのです。
僕が東京出身の妻と結婚したのは15年前ですが、その頃は全国に拠点を持つ中学受験塾は地元になかったように記憶しています。その後、ある大手塾が進出してきた際、妻は「岐阜で支配的な公立中学校から公立高校へという流れが、今後少しずつ変わっていくかもしれない」と直感的に思ったそうです。僕自身は高校まで公立育ちでしたから、それが意味するところを当時はよくわからないままでした。今では、私立中学校受験は選択肢の1つとして魅力的だと思うようになりましたね。要するに、当時の僕は自分の観測範囲でしか物事を見ていなかったということになりますか。公立中学校から公立高校を目指す考えは、地元では今なお根強く支持されているように感じますけれども、そうではない選択肢があっても良いですよね。
あくまでも個人的な話なのですが、一昔前までの「常識」が徐々に崩れつつある、と感じることが最近特に増えてきました。公立中学校から公立高校を目指す子がいても、公立中学校から私立高校を目指す子がいても、私立中高一貫校を目指す子がいてもいい。それぞれの個性や目標にあわせた進路選択の幅が増えることは、もっと歓迎されても良いように思います。進路選択にあたって、最初から「こうでなければならない」等と考えてしまうことは、自ら選択肢を減らしていくようなことです。それは子供にも大人にも言えること。今回の書店での“発見”は、多くの示唆を与えてくれているように思います。
※今回の記事の中で言う「岐阜県」は、岐阜南部、とりわけ岐阜地区を想定して書いています。又、当塾は中学受験に対応していません。