僕は公教育、とりわけ義務教育課程においては、国民として一定水準の学力を担保し得る場でないといけないと思っています。学力差を否定するものではありませんが、それは上はもっと上を目指せば良いのであって、底上げは必要であるというスタンスです。そして、これまで一貫して小学生の間は国語と算数が勉強のメインであるべきで、漢字ドリルと計算ドリルを徹底してやることが大切だという持論を展開してきました。このことについては、昨年書いたブログの記事「小学生の時はできていました?」でも理由を書いています。中学生になって勉強でつまずく多くの子が、実際には中学校で習う内容ではなく、小学校で習う内容でつまずいているからです。
ところが、塾予備校界隈では少し前から言われていることではありますけれども、来年度の教科書改訂で中学英語教科書に大幅な学習内容の変更が加えられることに対し、今までの考え方を少し変えねばならないと思うようになりました。小学校での英語学習が前提となり、中学の英語が開始されるからです。
岐阜地区で現在採用されている三省堂の『ニュークラウン』が来年度もそのまま採用されると仮定するとして、三省堂のホームページで「内容解説資料(指導・学習内容一覧)」を見ました。この記事を読んでくださる方には、是非この「内容解説資料」に目を通して頂きたいのですが、1年生のレッスン1からbe動詞と一般動詞の肯定文、疑問文、否定文が登場することに驚きを隠せません。正直な感想として、相当厳しいと思います。サンプル数が多くないとはいえ、これまで見てきた学校の定期試験で平均点程度の中学生でさえ、be動詞、一般動詞の肯定文から疑問文へ、否定文への書き換えができないというケースがかなり多かったからです。これは中学1年生に限ったことではなく、中学3年生でも言えることです。基礎的なところであっても、つまずいている中学生が少なくありません。
文法学習の負担増加のみならず、覚えなければならない単語数も増えます。京都教育大学のホームページ内で、小学校英語に関する研究をされている先生が書かれたわかりやすい資料を見付けました。その資料がこちらになります。これまで、中学校では1200語程度の英単語を学習してきましたが、ここから400から600語が上積みされるということになります。
英語が得意な中学生にとっても、新教科書での学習はなかなか厳しいと思っていますが、全ての中学生がこの量を学習する意味を考える時、はたして文部科学省が想定しているように、全体的な英語力を上げることに寄与するのかどうか疑問に感じます。
むしろ、英語がシビアになることで、今までの小学生が他のこと(漢字とか計算、白地図など)に使えていた時間を英語に充てざるを得なくなると思います。漢字の読み書き、基本的な四則計算や割合、速さなど、小学生のうちにこれらのことを徹底してやろう、から、これらに加えて英語の勉強もやろう、に変えざるを得なくなり、中学生だけではなく小学生の負担も増加します。それが原因となり、他のことも中途半端になるのであれば、そこまでして英語教育をする意味は何だろうと思わずにはいられません。