高校入試の社会の問題を教科書で解いてみる/RS野中/勉強が苦手な子のための学習塾/岐阜・岐南・笠松・ 各務原

 今回、実験的ではありますが、「高校入試の社会の問題を教科書で解いてみる」と題して過去問を解いていこうと思います。やってみようと思ったのは、羽島市で有隣塾を運営されている鈴木先生が「教科書だけで解く早大日本史」という面白い取り組みをされていることに刺激を受けたからです。今回は実験的なものですので、今後継続して取り組むかどうかはわかりませんが、もし継続して取り組むことになりましたら、同じタイトルでナンバリングしていこうと思います。

 

【使用教材】

・教科書 東京書籍『新しい社会』(以下、「教科書」と記載します)

・地図帳 帝国書院『中学校社会科地図』(以下、「地図帳と記載します」)

・過去問 旺文社『全国高校入試問題正解 分野別過去問 1217題 社会』(以下、「入試問題正解」と記載します)

 

 尚、著作権には最大限配慮した上で記述していこうと思いますが、もし問題があるようでしたらただちに修正を施します。

 

 今回は「入試問題正解」の第1編第1章(P4〜6)について解いていきます。番号の横にはどの都道府県で出題された問題か書いておきます。

 

1(島根県)

地図を見て経線が何度ごとに示されているかを答える問題です。地図上に注として“※東京の経度は、東経約140度である。”(入試問題正解P4)と書かれています。ロンドンを通る本初子午線から東京辺りを通る東経140度まで7本の経線が引かれていることから、140を7で割ると経線は20度ごとに示されていることがわかります。

教科書では、経線、本初子午線ともにP10に載っています。

 

2(岐阜県)

(1)

略地図から赤道を示す線を答える問題です。赤道を示す線を問う問題は頻出されることから、確実に答えられるようにしておく必要があると思います。地図帳P1〜3を確認すると良いでしょう。

目安として、赤道はアフリカ大陸中部のコンゴ民主共和国、インドネシアのスマトラ島及びカリマンタン島(ボルネオ島)、南アメリカ大陸のエクアドル(もしくはブラジル北部)を通ると覚えておくと良いかもしれませんね。

ちなみに、エクアドルという国名はスペイン語の「赤道」に由来します。このことを知っていれば、すぐに答えられるとも言えます。

又、私立高校入試では南北の回帰線を示す線を答える問題も出されますから、地図帳P1〜3で赤道に加え、南北の回帰線、更に日付変更線がどこを通っているのか覚えておくことが望ましいです。

 

(2)

アフリカ大陸の西側、南アフリカ大陸の東側の大洋を答える問題です。

地理学習では、最初に六大陸と三大洋を習いますから(教科書P7)、大陸と大洋の位置関係は必ず覚えておきましょう。

 

3(長野県)

北極点、南極点を中心にした地図から、アフリカ大陸と太平洋を答える問題です。地図帳P2下側に問題と全く同じ地図が載っていますから、こちらを確認しておきましょう。

大陸と大洋の位置関係は、一般的に地図としてよく見るメルカトル図法だけでなく、モルワイデ図法や正距方位図法、地球儀などでも見ておくと良いですね。これらの図法は、教科書ではP8〜9で確認することができます(教科書には図法の名称は記載されていません)。

 

4(福井県)

3に引き続いて、北極点、南極点を中心にした地図から、本初子午線を答える問題です。こちらも地図帳P2を確認しておくと良いでしょう。

 

5(熊本県)

フィリピン諸島とニュージーランドの2つのキーワードから、環太平洋造山帯を答える問題です。教科書P143の地図には、環太平洋造山帯とアルプス・ヒマラヤ造山帯の範囲がわかりやすく示されています。地図帳ではP9の下側の地図で示されていますが、教科書の方が範囲を認識しやすいと思います。

 

6(東京都)

地図と説明文からどの都市から都市へと移動したのかを答え、且つ出発地点の都市の雨温図を選ぶ問題です。説明文の冒頭に“国際的な穀物市場が立地する①の都市”(入試問題正解P5)とありますから、地理が得意な場合にはここでアメリカのシカゴとわかるかもしれません。ただし、教科書には確認する限りシカゴに穀物市場があることは記載されていませんので、その後の“①の都市を現地時間で3月1日午後5時30分に出発し、飛行時間13時間を要して、②の都市の現地時間で3月2日午後9時30分に到着した”(前掲P5)を参考に、時差を考えるとシカゴと日本(東京?)を結ぶルートであるとわかります。

雨温図の選択は、シカゴを出発地点であることがわからないと解くことが困難です。教科書にはシカゴの雨温図は載っていませんから、シカゴがどの気候帯に属するかをまず理解せねばなりません。地図帳P12を見ると五大湖周辺は冷帯(亜寒帯)に属することがわかりますので、これを把握してから教科書P26で冷帯の特徴である1年の気温の差が大きいことを理解すれば選択できるでしょう。

 

7(香川県)

西経105度のアメリカのデンバーと東京の時差を考えた上で、東京の日時からデンバーの日時を答える問題です。教科書P131に時差の計算方法が記載されていますので、東経にある都市間の時差、東経と西経にある都市間の時差の計算方法を覚えておきましょう。教科書P130にも記載されていますが、もし経度15度で1時間であることを忘れてしまった場合には、地球は24時間で1回転(360度)していることを思い出して、360÷24を計算すれば経度15度で1時間であることを思い出すことができますね。

尚、日本の標準時子午線が東経135度の兵庫県明石市であることは教科書P130に記載されています。

 

8(北海道)

(1)

経度0度の線が通る都市を答える問題。教科書P10に“イギリスのロンドンを通る本初子午線を0度として”と記載されています。

 

(2)

地図から北緯60度、東経100度の地点が含まれる国を特定し、その国の首都を答える問題。地図を見ればロシアであることがわかりますから、ロシアの首都モスクワを答えれば正解になります。

地図帳はもちろん、教科書P61のヨーロッパ地図でもモスクワが首都であることは確認できますし、同P69の「地理にアクセス 広大なロシア連邦」内でも首都モスクワと記載されています。

主要国は国名、位置だけでなく、首都も覚えておく必要がありますね。

 

(3)

地図上の3つの緯度に引かれた線(地図上の長さは同じ)のうち、実際の距離が長いものと短いものを選ぶ問題。教科書P9のメルカトル図法の説明“赤道からはなれるほど、実際の面積よりも大きく示されます。”と同P12の地図内に記載された“(赤道上の縮尺)”から、赤道上の線が実際の距離が最も長く、北緯60度上の線が実際の距離が最も短いとわかります。

それぞれの図法の特性は、教科書P9にそれぞれの図法の説明が記載されていますので、それを読むと良いでしょう。

 

9(岩手県)

(1)

与えられた正距方位図法の地図から、東京の東に位置する都市を選ぶ問題です。教科書P9に正距方位図法の地図が載っていますから、東京から東にあるのがブエノスアイレスであると認識できれば選択で迷うことはないでしょう。

 

(2)

(1)と同じ正距方位図法の地図上にある4地点を、東京からの距離が短い順に答える問題です(選択肢から選ぶ問題)。問題の地図中に東京から10,000kmの円と東京から15,000kmの円が描かれていますから、それによって位置関係を把握することはできます。

教科書P9の正距方位図法の地図、地図帳P153の東京を中心とした正距方位図法の地図で東京と主要都市のおおよその距離関係を掴んでおくと良いでしょう。イギリスのロンドンが東京から10,000km弱であることは覚えておくのが望ましいですね(東京・ロンドン間は約9,500km)。

 

10(新潟県)

3枚の地図の中から、秋田市とほぼ同緯度にある都市を選ぶ問題です。地図帳P1〜3で日本の各都市と同緯度の都市を確認することができますし、教科書P61のヨーロッパ地図と同P240の東北地方地図でも北緯40度地点を確認することができます。スペインのマドリードと思われる地点が秋田県とほぼ同緯度にあることがわかります。

私立高校入試対策も兼ねて、秋田県の八郎潟が北緯40度と東経140度の交会点であることを覚えておきたいところですね。

 

日本との時差が12時間である都市を選ぶ問題です。日本と経度0度のイギリスのロンドンが時差9時間であることを認識できれば(経度の差は135度)、日本との時差が12時間である都市はイギリスよりも西側にある国であることがわかります。選択肢の中でイギリスよりも西側にある地点が含まれているのは1つだけですので、ブラジルにある地点を選ぶことになります。

時差計算については7でも書いた通り、教科書P131を参照してください。

 

11(佐賀県)

佐賀を中心とした正距方位図法の地図中から、南アメリカ大陸を答える問題です。教科書P9、地図帳P153でそれぞれ確認できますが、地図帳には大陸名も記載されていますので地図帳で確認するのが良いでしょう。

 

12(静岡県)

ニュージーランドの東側に3つの地点が登場します。赤道〜南緯20度のエリアをX、Xより南東に位置する南緯20〜40度のエリアをY、Yより南東に位置する南緯40〜60度のエリアをZで示されています。

 

a

Xのエリアにあるサモアやトンガなどの国が含まれる州を答える問題です。教科書P12に世界を州区分した地図が掲載されています。教科書P12の地図にはサモアやトンガが出てきませんので、地図帳P2で確認するのも良いでしょう。

 

b

Xの地球上の正反対の範囲にある大陸と海洋を答える問題です。地図帳のP2を見ると、ニュージーランドの北島の東端からすぐ東側に経度180度の線があることがわかります。これから判断すると、Xのエリアは西経165〜180度、赤道〜南緯20度のエリアであろうと思われますから、Xの正反対の範囲は0〜東経15度、赤道〜北緯20度のエリアで、そこに該当するのはアフリカ大陸になります。Xの正反対の範囲にはギニア湾がありますが、問題に“三海洋(三大洋)のうちの1つがある”とありますので、大西洋と答えます。

 

c

X、Y、Zの面積関係で正しいものを選ぶ問題です。8の(3)で書いたことをそのまま流用して考えると、Zの面積が最も小さいことがわかります。

 

13(群馬県)

メルカトル図法の地図と正距方位図法の地図を見て、4つの中から正しいものを選ぶ問題です。

以下は選択肢の引用です(入試問題正解P6)

 

“ア デリーとリオデジャネイロの経度の差は約50度である。

 イ リオデジャネイロから見るとデリーは南西にあり、その間の距離は約20000kmである。

 ウ 東京からリオデジャネイロまでの距離は、東京からデリーまでの距離の約3倍である。

 エ 東京、デリー、リオデジャネイロのうち、最も早く日付が変わるのはリオデジャネイロである。”

 

ア 経度の差ではなく、緯度の差なので誤り。緯度と経度については、教科書P10に記載されています。

イ 東京を中心とした正距方位図法では、リオデジャネイロとデリーの位置関係は正確に把握することができないため誤り。これは教科書P9の正距方位図法の地図の説明で記載されています。ちなみに、リオデジャネイロからデリーの距離はおよそ14,000kmであるので、距離も誤り。

ウ 正解

エ 日付変更線が東京より東側にあることから、日付が早く変わる順は東京、デリー、リオデジャネイロであるため誤り。教科書P131の「時差と標準時」の地図を見れば、東京と各地域との時差を確認することができます。

 

以上、実験的ではありますが、「高校入試の社会の問題を教科書で解いてみる」をやってみました。自分の勉強を兼ねてまたやってみたいと思いますが、今回は「入試問題正解」3ページ分でこの量なので、次回がいつになるかはわかりません。この記事をどれだけ読んで頂けるかは気になりますので、それ次第、ということにしておきましょうか。