見守るということ/RS野中/勉強が苦手な子のための学習塾/岐阜・岐南・笠松・ 各務原

 これまでにも明らかにしてきたことではありますが、進路に関する僕の方針として、合格の実現が極めて困難な場合、明らかに適性があるとは思えないといった場合を除き、生徒本人及びご家族の意向を尊重するようにしています。合格実績を売りにするようなことはしていませんし、生徒自身が選んだ高校で高校生活を謳歌してくれたら良いという考えは、今後も変わることはないでしょう。塾の名声のために、生徒達に無理をさせてまで上を目指すような指導をしていくつもりは全くないからです。もっとも、とにかく上を目指させる指導力を僕が有しているとも思っていません。入った高校を卒業できる程度には、中学卒業までに基礎体力を付けて欲しい、そう願って日々生徒達と時間を共有しているという感じでしょうか。

 

 そもそも、僕のところに集ってくる子の多くは元々勉強嫌いな子達です。しかも、かなり深刻な状態になってからのケースが少なくありません。単に勉強を一緒にしていれば何とかなるという次元ではないこともしばしばです。そう、勉強に取り組む以前のことも教えていかねばなりません。このことは過去の記事でも書きました(こちらを参照)。同時に、大きく遅れをとってしまっていることをリカバリーしつつ、今習っていることも学校から課題として出される以上やらねばならないのです。それらを同時進行していくことは決して簡単なことではありませんし、一般的に生徒達の成績を向上させ、志望校合格へと導くことが塾としての使命であるとすれば、目に見えた成績の向上を実現できない場合とて少なくない現状に、苦悩と葛藤を抱かずにはいられません。

 

 しかし、勉強嫌いな子達の場合、道を誤らないように見守っていくこともまた重要な要素であるという考えは、教え子達を見てきて強く感じるところでもあります。残念ながら、教え子の何人かが高校を中退しました。零細塾で教え子がそれ程多くないにも関わらず、です。その事実が、彼らが抱えていたであろう様々な問題点を軽視してはいけないと教えてくれたように思います。勉強は大事です。もちろん一緒にやっていきます。ただし、それだけでは彼らが抱える問題を根本から解決できる訳ではないとも思うからです。

 

 ところで、先日のことになりますが、定時制高校に通う教え子(以下、A君とします)がどうやら厳しい状況にあると感じたため、食事に誘って現状を聞いてみました。A君は高校入学以来、働きながら高校に通っています。本人が選択した進路ではありますが、昼間働きながら夜高校に行くという生活をし続けていることに、僕が彼と同じ年齢の時に同じことができたかと想像するととてもじゃないができなかっただろうと感じます。会って話してみたところ、仕事のことでかなり悩んでいるようでした。いくらアルバイトとはいえ、責任ある仕事は求められます。顧客にとってみれば、依頼した仕事を実際にしたのが正社員かアルバイトかなど全く無関係ですから、求められればその求めに応じなければならない、しかしそれをやり続けることによって学校に通えなくなるのは困る、簡単に言うとそういったことでした。職場内での人間関係にも疲れ果ててしまった様子で、僕の拙い経験を話しつつ、最終的には「体は大事にしろよ」と言ってあげるのが精一杯でした。

 

 後日、A君のお母様からご連絡を頂き、今の職場をやめ、次の職場で働くことになりましたとのこと。以下、A君のお母様からのメッセージです。

 

「今までAには先生を含めて素敵な大人の人ばかりで、社長(注:それまでの勤務先の)は初めての人種で戸惑っていたと思います(笑) ◯◯(注:新しい職場)みたいな職場は今後、Aより年上の後輩が入ってくる機会もあるでしょう。その時に人に教える、という経験も大事なことだと思います。今回、先生とお話をさせてもらえたことがAの中で大きかったです。いつも先生には助けていただいています。本当にありがとうございます。」(一部伏せ字、それ以外は原文ママ)

 

 このメッセージに対する僕の返答です。

 

「いえいえ、見守る大人は1人でも多い方が良いという思いでいるだけです。卒業しても大切な教え子であることに変わりません。A君が自ら縁を切ると言わない限り、ずっとお節介し続けます(笑)」

 

 A君はナイスガイではありますが、本当に勉強嫌いで、それを改善するための指導が上手くできたとは言い難いものがあります。勉強は確かに今も苦手で嫌いのようですが、彼は道を誤ることなく、堂々と今を生きようとしています。それで何か不足があるとは思いません。生き方はそれぞれです。

 

 子供が道に迷いそうになった時、見守り、支えてあげられる大人が1人でも多くいた方が良い。その思いだけは変えないようにしていこう、と強く思わせてくれる出来事でした。

 

※今回の記事は、A君のお母様から内容に関しての承諾を得た上で書きました。そのことを最後に記しておきます。