前回のブログの最後に、「そもそも塾とは本当に必要な存在なのだろうか?」という疑問を投げかけてみました。そして、僕が考える「塾とは何か?」について書いてみようと思ったので、今回実際に書いていきます。
まず、塾が必要な存在なのかどうかという問いに対し、様々な意見があると思っています。必要だと言う人もいれば、必要ではないと言う人もいるでしょう。とりわけ、大学受験の浪人対象の予備校などは、ある意味で受験生の不幸(浪人という事実)で成り立っている部分はあり、それを「必要悪」などと呼ぶ人もいます。そうでなくても、マニュアル化された受験テクニックを教えるところ、といったマイナスの印象を抱かれる人はいるでしょうし、「受験産業」などと揶揄されることもしばしばあることを承知しています。塾の存在そのものが、過度な「受験戦争」「受験競争」を煽っているという側面も否定できません。又、こちらのブログでも度々触れさせて頂いている神奈川の先進舎進学教室さんのブログでも指摘されている通り、各地で大手塾による地域トップ校の合格占有率の寡占化が進んでいる状況下では、最早民間の営利企業である塾が公立高校入試に与える影響力は否定できない現実となってきました。すなわち、塾内での序列がそのまま入試結果に直結し得るということになり、塾内での受験者調整ができてしまうということです。こうした現実を見てしまうと、塾の在り方として疑問を持つ人が少なからずいるかもしれません。
これらのことを踏まえ、それでも僕は「塾は必要であろう」と思っています。それは、自身が塾を運営しているからそう答えるのではなく、塾を運営していなくても同じように答えているでしょう。何故なら、塾というと「上を目指す子のための場所」と思われがちですが、実際には学校で習うことを全て自力で解決できる子供ばかりではないし、それを補完するための場所は絶対に必要であると考えるからです。
これまで、どちらかと言えば、塾は進学校を目指す子が通う場所という印象が少なからずあり、特に一定年齢以上の方には塾=学校で習うこと以上の知識を得るための場所、と考える傾向があるように思うのですが、学力の二極化が叫ばれて久しい昨今においては、寧ろ勉強が苦手な子供達の受け皿こそ必要不可欠であると思っています。言い方はおかしいですが、勉強が得意な子供達は放っておいてもやります。今時、インターネットを使えば、上を目指す子供達は自身が使うべき教材を探すことは簡単です。彼らはどういう手段を用いても、もっとできるようになりたいと考えますから、自らの意思でそうした欲求を満たしてくれる場所を見付けます。そうした場所の1つが、より知的欲求を満たし得る塾、ということでしょう。しかし、そうではない子供達にとっては、勉強以前に解決せねばならない問題が山積です。生き方、考え方の指標となり得る存在が必要です。はっきり言ってしまえば、学校だけでそれらを解決できる可能性は限りなくゼロ。学校の先生に求めたところで、教室にいる生徒の何十分の一に過ぎない個人にそこまで個別で時間を使うことなど不可能です。それを行ってしまったら、公教育ではなくなってしまいます。だからこそ、そういった子供達の受け皿になり得るのもまた塾ではないか?と思うのです。
僕は初めて一緒に勉強することになった生徒との出会い以来、一貫して勉強嫌いな子供達と共に歩んできました。勉強しよう、などという号令だけではどうすることもできない猛者達です。アメとムチどころか、アメとアメとアメとアメとアメとムチくらいでないと成り立ちません。そういった子供達を迎え入れ、何のために勉強をするのか、といったところから本当に少しずつ向き合えるように、時に優しく、時に厳しく接してきました。「こんなことを塾の立場で教えるべきか?」と思うようなことまで、しかしそれが彼らには必要だと思って伝えてきたことも多々あります。一般的な塾の在り方とはやや異なるであろうことも、公教育ではない民間だからこそ、大手塾ではない個人塾だからこそできる強みを生かして取り組んできました。そして、着実に成長する子供達の姿を見てきました。彼らにとって、塾は勉強する場として以上の「居場所」としての機能を果たしているのではないか?そう思うようになってきたのです。
最後に、僕が考える塾とは、先にも触れたように子供達の「居場所」であると思っています。それぞれが求めるものを解決する場所、解決でき得る場所として。故に、様々な個性の塾があれば、多様なニーズにも応えられることになると思います。塾は民間の営利企業ですから、それはもちろん多数の子供達を迎え入れたいと思うのは当然だとしても、塾の個性が求められているものとマッチして初めて子供達の「居場所」となり得ます。勉強へのモチベーションが高く、更に上を目指そうとする子はそういう子のための塾を選ぶのが良いでしょう。そうでなければ、真に求める「居場所」たり得ません。逆に、勉強へのモチベーションが低い子は、モチベーションが高い子が通う塾では「居場所」を確保するのは難しいと思うので、僕達と一緒にゆっくりではあっても確実に一歩を踏み出せたらいいかな?と思いますね。